こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『ノースマン 導かれし復讐者』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『ノースマン 導かれし復讐者』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『ノースマン 導かれし復讐者』が好きになると思いますよ♪
映画『ノースマン 導かれし復讐者』のあらすじ
9世紀、スカンジナビア地域にある、とある島国。
若き王子アムレート(オスカー・ノヴァク)は、旅から帰還した父オーヴァンディル王(イーサン・ホーク)とともに、宮廷の道化ヘイミル(ウィレム・デフォー)の立ち会いのもと、成人の儀式を執り行っていた。しかし、儀式の直後、叔父のフィヨルニル(クレス・バング)がオーヴァンディルを殺害し、グートルン王妃(ニコール・キッドマン)を連れ去ってしまう。10歳のアムレートは殺された父の復讐と母の救出を誓い、たった一人、ボートで島を脱出する。
数年後、怒りに燃えるアムレート(アレクサンダー・スカルスガルド)は、東ヨーロッパ各地で略奪を繰り返す獰猛なヴァイキング戦士の一員となっていた。ある日、スラブ族の預言者(ビョーク)と出会い、己の運命と使命を思い出した彼は、フィヨルニルがアイスランドで農場を営んでいることを知る。奴隷に変装して奴隷船に乗り込んだアムレートは、親しくなった白樺の森のオルガ(アニャ・テイラー=ジョイ)の助けを借り、叔父の農場に潜り込むが…。
・ロバート・エガース監督最新作
・北欧神話×ヴァイキング
・リアルとファンタジーの融合
・ワンカットで撮影した大迫力のアクションシーン
『ウィッチ』、『ライトハウス』で全世界に衝撃を与えた超個性派の天才映画監督ロバート・エガースの最新作です。
北欧を舞台に展開する壮大なスケールのファンタジー巨編であり、スカンジナビアの神話やアイスランドの英雄物語、ヴァイキング伝説をベースにした復讐譚で、エガース監督としては初のアクション大作に挑戦しています。
映画の評価もとても高く、北米では2022年4月に劇場公開されるや5週連続TOP10入りを果たし、米映画批評集計サイト「Rotten Tomatoes」では89%フレッシュを記録しています。
そして何と言っても、出演している俳優陣の豪華な顔ぶれが話題を呼んでいます。
主演&製作を兼任するのは『ゴジラvsコング』などで知られるスウェーデン出身のアレクサンダー・スカルスガルド、エガース監督の『ウィッチ』からアニャ・テイラー=ジョイ、『ライトハウス』からウィレム・デフォーが再登板し、『スキャンダル』のニコール・キッドマン、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』のクレス・バング、『ブラック・フォン』のイーサン・ホーク、歌手で『ダンサー・イン・ザ・ダーク』主演も務めたビョークという超豪華な顔ぶれです。
また本作の脚本は、独特な世界観とストーリーが話題を呼んだ『LAMB(ラム)』のショーンが担当しております。
【ネタバレ】映画『LAMB ラム』考察【アダの正体と羊人間について】
実際ショーンは、スカンジナビアに伝わるアムレート伝説や神話、アイスランド・サーガの要素をミックスしたオリジナルストーリーを生み出しています。
また考古学者や歴史家などの専門家の意見を取り入れ、映画が可能な限り歴史に忠実であるよう助言ももらったという徹底ぶりです。
当ブログでは、『ノースマン 導かれし復讐者』の気になる謎を徹底考察・解説していますので、観賞後のヒントになれば嬉しいです。
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【ネタバレあり】映画『ノースマン 導かれし復讐者』のネタバレ一覧
ネタバレ①:相関図
本作は、”アムレートによる復讐の物語”です。
主人公アムレートは、父であるオーヴァンディル王を殺した叔父フィヨルニルに復讐を果たすため、獰猛なヴァイキング戦士となり、奴隷に変装して叔父フィヨルニルが営む農場に忍び込む、というのが主なストーリーです。
そしてアムレートの母グートルン王妃、アムレートに使命を思い出させるビョーク、そしてアムレートを導くオルガなど魅力的なキャラクターが登場します。
そこまで人間関係は、複雑ではないのですが相関図があるとよりわかりやすくなりますので、こちらの画像を見ながらブログを読んでいただけると、より内容が理解しやすくなります。
ネタバレ②:男性と女性の描き方
本作では男性と女性の描き方を明確に分けております。
というのも、”男性は原始的、女性はスピリチュアル”に描いています。
例えば男性であるアムルートは、原始的である肉体的な力で困難を打ち破り、自らの道を切り開いていきます。
そして女性であるオルガは、スピリチュアルである精霊の力でアムレートを導いていくのです。
この男性と女性の力の描き方については、本作中でオルガがアムレートに対し、”あなたは人の骨を打ち砕けるかもしれないけれど、私は人の心を打ち砕ける”と言っていることから、明確に男性と女性の描き方を明確に分けていることがわかります。
これはヴァイキングの文化が大きく影響しています。
というのも、ヴァイキングの文化では、”人は皆、男性的な資質と女性的な資質の両方を持っており、体内に女性の精霊を宿している”と考えられているのです。
そのためアムレートは、自分の体内に宿している女性の精霊に導かれていると感じております。
そしてアムレートの手助けをするのがオルガというわけです。
アムレートには男性の強さ、オルガには女性の強さをそれぞれ描き、運命に立ち向かう姿を描いているのです。
ネタバレ③:カメラ1台で撮影するシングル・カメラ方式
本作の見所の1つに、カメラ1台で撮影したシングル・カメラ方式が挙げられます。
カメラ1台で撮影した理由は、”観客に映画の世界に入り込んでもらうため”です。
通常であれば、複数のカメラを設置し、シーンを繋げ合うことで1つのシーンを作り上げます。
しかしエガース監督は、あえてカメラ1台による撮影にこだわり、驚異的な映像を撮影することに成功しました。
実際エガース監督は、かなり綿密に計画を練り、撮影シーンを想定したグランド・プランを全ての場面で練り上げ、現場にカメラを設置し必要な物が全てフレームに収まるかチェックまで行いました。
そのため、セットをもう10㎝ずらしたり、室内シーンではカメラ移動のためにドア口を実際より広くしたり、それをカメラに映してはいけなかったり等、様々な課題をクリアして本作の驚異的な映像が仕上がったのです。
このような努力も、全ては観客に映画の世界に入り込んでもらいたいからなのです。
というのも、複数のカメラで撮影されているアクションシーンは、既に世の中に溢れており、観客は見慣れています。
しかしカメラ1台で撮影することにより、臨場感とリアリティが増し、観客は映画の世界に入り込むことが出来るのです。
ネタバレ④:北欧神話とヴァイキング
本作は、北欧神話がモチーフとなっています。
そして北欧神話とヴァイキングには、深い関係性があるのです。
というのも、ヴァイキングを始めとしたノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランドの人々は、”キリスト教ではなく北欧神話を信仰している”んですよね。
だからこそ本作中では、キリスト教のことを「キリスト教のブタ」と侮辱しているのです。
北欧神話には、巨大な狼フェンリル、大蛇ミズガルズオルム(ヨルムンガンド)などの怪物が登場するのも特徴的です。
また神々もアース親族・ヴァン親族・ヨトゥン(巨人族)の3つの氏族があります。
ちなみに本作に登場する運命の剣ドラウグルは、大蛇ミズガルズオルム(ヨルムンガンド)の牙を原料にし、ヨトゥン(巨人族)の鍛冶場で製造されたと言われています。
そんな北欧神話ですが、様々な神が登場しており、その中でも最も有名で北欧神話における最高神といえばオーディンです。
しかし本作では、オーディンの他にフレイの名前が登場します。
この辺りの情報を整理しておくと、より本作が楽しめると思いますよ。
ネタバレ⑤:オーディン・フレイについて
本作で信仰されている北欧神話の神々は、”オーディンとフレイ”です。
①オーディン
・北欧神話における最高神
・戦争と死を司どる
・アース親族の長
・神と巨人のハーフ
・愛用武器はグングニル
・2羽のカラス「フギン」と「ムニン」を従え、世界中の情報を取得
・知識を取得するためにミーミルの泉を飲み、代償として片目を失う
・ラグナロクにて巨浪フェンリルに敗北し、飲み込まれる
②フレイ
・最高神オーディンの妻であり、最高位の女神
・愛と結婚と豊穣を司どる
・人間の運命を知る能力を持つ
どちらの神も北欧神話を代表する神様ですね。
そんなオーディンとフレイですが、本作では信仰している人間が異なっているのが特徴です。
というのも、”アムレートはオーディン信仰、叔父フィヨルニルはフレイ信仰”なんですよね。
まずアムレートは、オーディン信仰であるため、全ての優先事項が戦いであり、戦死してヴァルハラに行くことが目的です。
対して復讐相手である叔父フィヨルニルは、フレイ信仰であるため、戦いを好まず、戦死も望んでいないんですよね。
この信仰の違いだけでも、アムレートと叔父フィヨルニルの考え方が異なるのがわかります。
しかも本作中盤までは、はアムレートの生き方であるオーディン信仰に共感出来るのですが、終盤以降に叔父フィヨルニルの考え方がわかってくるとフレイ信仰のほうに観客の気持ちが傾いていってしまうんですよね。
北欧神話の神々の名前を利用して、アムレートと叔父フィヨルニルの人生を描くという手法は、とても上手いと感じました。
ネタバレ⑥:オーヴァンディル王の死の真相
本作終盤でグートルン王妃から明かされるオーヴァンディル王の死の真相は、アムレートの思惑とは異なり、かなり衝撃的な内容でした。
オーヴァンディル王の死の真相は、”妻であるグートルン王妃が義弟フィヨルニルに、オーヴァンディル王と息子アムレートの殺すように依頼した”というものです。
まずグートルン王妃は高貴な貴族などではなく、奴隷として連れてこられ、好色家であるオーヴァンディル王に無理やり犯され、息子アムレートを産みました。
つまりオーヴァンディル王がグートルン王妃を側に置いていた理由は、”息子アムレートの母親だから”というだけであり、グートルン王妃に対して愛情を抱いておらず、単なる性欲の発散する対象として捉えていたということです。
グートルン王妃が言うには、「オーヴァンディル王は財宝と売女にしか関心がない」ということですので、あまり人間的に優れた人物ではなく、自分勝手で横暴な人物だということが明らかになります。
確かに冒頭シーンで、グートルン王妃を侮辱する道化師に対し、フィヨルニルは激怒していましたがオーヴァンディル王は「ただの冗談ではないか」とたしなめていました。
この冒頭シーンからも、実はフィヨルニルのほうが人格者であることが示唆されています。
そして遂に我慢出来なくなったグートルン王妃は、人格に優れ良き指導者である義弟フィヨルニルに殺しを依頼するのです。
というのも、アムレートにとって父であるオーヴァンディル王は、偉大なる王であると同時に偉大なる父親でした。
そのため父の真相を聞かされたアムレートは、深く動揺してしまうのです。
もしかしたら全てはグートルン王妃の狂言であり、今の生活を壊そうとしているアムレートが邪魔になり、敢えて真相を捻じ曲げて伝えたのかもしれませんが、その可能性は低いと考えられます。
ネタバレ⑦:父親違い・腹違いの息子たち
出典:IMDb
本作で重要な役割を果たすキャラクターの1人に叔父フィヨルニルとグートルン王妃の息子グンナルがいます。
長男ソリルとは、腹違いの兄弟となります。
そしてアムレートとグンナルは、”父親違いの兄弟”ということになるのです。
そしてアムレートは、グンナルの目の前で2人の母親であるグートルン王妃を殺害し、そのままグンナルを殺害してしまいます。
もしこの時にグンナルが生きていれば、アムレートのように復讐に取り憑かれ、新たなノースマンになっていたのかもしれません。
本作は、アムレートとグンナルの対比がとても上手く描かれていると感じました。
また忘れてはならないのがフィヨルニルとオーヴァンディル王は、腹違いの兄弟ということです。
腹違いの兄弟ということで人格に優れたフィヨルニルは王にはなれず、兄であり横暴な人格のオーヴァンディル王が王位に就くという皮肉が生じています。
本作において、「父親違い」・「腹違い」はとても重要なキーワードであり、キャラクターたちの人生を左右するものでもあるのです。
ネタバレ⑧:アムレートの復讐
アムレートは、”父であるオーヴァンディル王を殺し、母であるグートルン王妃を連れ去った叔父フィヨルニルに復讐する”という一心で生き抜いてきました。
しかしグートルン王妃から真相を聞かされたことにより、深く動揺してしまいます。
そしてオルガと出会ったことで、「憎しみから逃れ、希望ある未来を探す」という選択肢を見つけたアムレートですが、結局のところは叔父フィヨルニルに復讐を果たすために戻ってきます。
アムレートが叔父フィヨルニルの元に戻った理由の1つに「オルガや産まれてくる子供をフィヨルニルの魔の手から守るため」が挙げられますが、実際にアムレートが戻った理由は、”立派な戦死を遂げてヴァルハラに行くため”なんですよね。
つまり、”アムレートは、オルガではなく自分自身のために戻った”ということです。
ここにもアムレートがオーディン信仰である設定が活きていますよね。
結局のところアムレートは、グートルン王妃から真相を聞かされた後でも信念を曲げることなく、結果的に仇であるフィヨルニルだけでなく、助けるはずだったグートルン王妃とグンナルの命も奪ってしまいます。
真相を認めることなく、ただ己の信念のみで行動するアムレートの姿は、”北欧神話に登場する狂戦士ベルセルク”を彷彿させます。
もしオルガと共に「希望ある未来」を探していたら、アムレートは死ぬことなく幸せな生活を送れたのかもしれません。
しかしヴァルハラに行くためには、立派な戦死を遂げる必要がありますので、どちらにしてもアムレートは戦場に行きたがったんでしょうね。
ネタバレ⑨:フィヨルニルの復讐
本作には、アムレートの復讐以外にも復讐が存在します。
それがフィヨルニルの復讐ですね。
フィヨルニルの復讐の目的は、”グートルン王妃とグンナルの命を奪ったアムレートを殺すこと”です。
本作序盤では、悪の根源として考えられていたフィヨルニルですが、実は人格者であったことが判明します。
しかしアムレートにとっては、父親であるオーヴァンディル王を殺した張本人であることは変わりないため、復讐の対象となっているのです。
そんなフィヨルニルですがアムレートとは異なり、復讐を自らの信念を達成するための行為にしておりません。
というのも、フィヨルニルの心の奥底にある復讐の根源は、”愛する妻と息子への愛”なんですよね。
当初はアムレートも両親の愛のために復讐を果たそうとしていましたが、真相が明らかになった後は、ヴァルハラに行くために復讐するような流れになってしまっているんです。
己の信念のために復讐を果たそうとするアムレート、愛する家族の仇を討つために復讐を果そうとするフィヨルニルの姿は、観客に対し”どちらの復讐が正義なのか?”を問題提起しているように見えてなりません。
ネタバレ⑩:女王オルガ誕生
アムレートと結ばれたことにより、双子を身籠ったオルガ。
そんなオルガは、王たちの系譜である「王たちの樹」に迎えられ、新たな女王となります。
オルガが新たな女王になること、これこそが本作中で語られていた”ノルンの紡いだ運命”だと考えられます。
【ノルン】
・北欧神話に登場する、運命を定める3人の女神
・ウルズ(運命)、ヴェルザンティ(存在)、スクルド(必然)を司る
・2人が幸運をもたらし、1人が不運をもたらす
・世界樹ユグドラシルの根に、ウルズの泉の水をかけて管理している
アムレートに己の運命を思い出させた預言者が「女の王」と言っていましたが、これは明らかにオルガのことですね。
そしてオルガのお腹の中には双子がいる、ということはオルガと双子で3人になるんです。
つまり、”オルガと子供たちは、ウルズ・ヴェルザンティ・スクルドを表している”と考えられます。
オルガは運命に導かれ、アムレートと出会い、双子を身籠りました。
オルガが奴隷になった理由は明確に描かれておりませんでしたが、おそらく”アムレートと出会い、双子を身籠るために奴隷になった”と考えられます。
王家の血を引くアムレートと結ばれることで、新たな女王となり、子供たちと共にノルンになろうとした、ということです。
更にスクルドは、死者をヴァルハラに連れて行くワルキューレの1人です。
気を失ったアムレートをオルガが助けた際、ワルキューレがアムレートをヴァルハラへ連れていくシーンがありました。
このシーンからも、”オルガ=スクルド”ということが考えられます。
そうなると残された双子は、ウルズ・ヴェルザンティということになります。
ラストシーンで女の子が映し出されておりましたので、おそらくウルズ(女の子)・ヴェルザンティ(男の子)なんでしょうね。
ノルンは幸運をもたらすと同時に不幸ももたらす女神ですので、今後オルガと子供たちが世界にどのような影響をもたらしていくのかが楽しみですね。
ネタバレ⑪:ヴァルハラへ旅立つアムレート
出典:IMDb
ヴァルハラとは、”北欧神話における最高神オーディンの宮殿”です。
ワルキューレによって選別された戦士の魂が集められており、戦と宴が繰り広げられています。
ワルキューレに選別されるためには、戦場で立派な戦死を遂げる必要があり、だからこそオーディン信仰であるオーヴァンディル王やアムレートは、立派な戦死にこだわっていたわけですね。
そしてワルキューレは戦士の魂をヴァルハラに集める理由は、”ラグナロク(終末戦争)に備えるため”です。
ラグナロク(終末戦争)のことを簡単に説明すると、”神々を含めた生物が死に絶える終末戦争”のことです。
ラグナロク(終末戦争)が起こる直前、太陽と月が飲み込まれ、星が天から落ち、大地と山が震え、あらゆる命が消え去ります。
そしてロキ、フェンリル、ガルム、ヨルムンガンド、フリュム、スルト、といった北欧神話を代表する神や魔物、巨人が最高神オーディンたちを打ち倒し、最後はスルトの放った炎が世界を覆い尽くしてしまうのです。
つまりワルキューレは、”ラグナロク(終末戦争)に勝利するため、屈強な戦士たちの魂を集めている”ということですね。
そしてアムレートは、仇であるフィヨルニルを討ち取り、自らも立派な戦死を遂げることでワルキューレに迎えられ、無事にヴァルハラへと旅立っていきました。
しかし同時に愛するオルガや子供たちとの別れも意味しています。
個人的には、「オルガや子供たちと未来の希望を歩む」ほうがアムレートにとって幸せだったと思いますが、アムレートはオーディン信仰のため、ヴァルハラに迎えられる選択を行なったわけです。
ネタバレ⑫:ラストシーンの意味
出典:IMDb
ラストシーンは、新たな女王となったオルガが「王たちの樹」に迎えられ、娘と思われる子供が映し出されます。
この時に娘は、王の証である剣と錫杖を持っております。
このシーンからも、”新たな女王の座は、オルガから娘に引き継がれる”ということがわかります。
しかし本作の時代背景ですと、後継者は娘ではなく息子になるはずです。
オルガの子供は双子(息子・娘)であるため、本来であれば息子が王位を引き継ぐのが一般的なはずです。
息子ではなく娘が王位を引き継いだ理由は、”3人は運命の女神ノルン”だからだと考えられます。
ノルンは女神ですので、息子ではなく娘が王位を引き継いでいく、つまり”オルガ以降の王位は、娘が引き継いでいく”ということです。
本作は序盤から中盤にかけてアムレートを中心とした男尊女卑社会を描いています。
しかしオルガが子供を身籠ったシーンから、少しずつ男性ではなく女性側の視点で物語が描かれているのです。
特にきっかけとなったのは、グートルン王妃の真相告白ですよね。
あのシーンから物語が180度転換しました。
中盤までは徹底した男尊女卑社会を描きながら、ラストシーンは「ノルンが紡いだ運命」のとおり「女性が王位を引き継いでいく」というのは、なかなか皮肉が込められていて面白いですね。
映画『ノースマン 導かれし復讐者』の感想
「ウィッチ」、「ライトハウス」で話題をかっさらったロバート・エガース監督の最新作であり、初のアクション映画ということで期待値MAXで観賞しました。
復讐をテーマに描いているので、終始薄暗い世界観でしたが、圧倒的没入感とストーリーで非常に楽しめました。
過去のヴァイキング映画もオマージュしており、冒頭の「父さんが帰ってきた」のセリフは『小さなバイキング ビッケ』、アムレートの登場シーンは『コナン・ザ・グレート』、敵の鼻を抉るシーンは『コナン・ザ・バーバリアン』などが挙げられます。
またアムレートの復讐劇は、シェイクスピアの『ハムレット』をオマージュしており、ロバート・エガース監督の本気度が窺い知れるところです。
そして本作の見所の1つに、”リアルとファンタジーの融合”があります。
本作は「アムレートの復讐」というリアルを描きながらも、「北欧神話」というファンタジーも描いているんですよね。
このリアルとファンタジーの融合バランスが非常に絶妙です。
ヴァイキングとして村を襲い、子供すらも生きたまま焼き殺す残虐シーンがあったかと思いきや、ヴァルハラやワルキューレなどの北欧神話も描く、この切り替えが魅力的です。
また一瞬しか登場しませんが、ウィレム・デフォーが演じる道化師ヘイミル、ビョークが演じる預言者など、リアルとファンタジーの狭間にいる人物が登場します。
中盤からアムレートの復讐決意が揺らいでいくシーンも見所でしたよね。
まさか助けようとしていたグートルン王妃が黒幕だったとは・・・アムレートが可哀想になりました。
個人的には、アムレートはオルガと共に生き延びてほしかったですね。
あんな状態になってフィヨルニルが復讐を果たすためにアムレートを追ってくるかとも思いませんし、アムレートは戻る必要がなかったんじゃないでしょうか。
でも戻らないとオーディンのいるヴァルハラに行けないというジレンマ・・・。
オーディン信仰ってややこしいですね、アムレートもフィヨルニル同様にフレイ信仰だったら良かったのに笑。
まとめ
間違いなく2023年を代表する映画の1つでしょう。
それほどまでに独特な世界観に引き込まれました。
特に序盤のカメラ1台で撮影するシングル・カメラ方式は圧巻であり、世界観に完全に引き込まれます。
少しばかり残虐なシーンもありますので苦手な人はキツイかもしれませんが、ファンタジー要素も強いため、そこまで苦ではありません。
アムレートとフィヨルニルの復讐劇、オルガの運命など見所が盛り沢山です。
本作の脚本は、独特な世界観とストーリーが話題を呼んだ『LAMB(ラム)』のショーンが担当しているため、気になった人は是非『LAMB(ラム)』もご覧になってください。
【ネタバレ】映画『LAMB ラム』考察【アダの正体と羊人間について】
また北欧神話繋がりですと、ロバート・エガース監督の『ライトハウス』もオススメです。
【ネタバレあり】映画『ライトハウス』感想と考察【気になる謎を完全解説!灯台の頂上でハワードが見てしまったものとは?】
これからもロバート・エガース監督からは目が離せませんね。
\31日間無料でお試し/
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最後まで読んでくれてありがとうございました。