こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『MEN 同じ顔の男たち』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『MEN 同じ顔の男たち』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『MEN 同じ顔の男たち』が好きになると思いますよ♪
映画『MEN 同じ顔の男たち』のあらすじ
夫の死を目の前で目撃してしまったハーパー(ジェシー・バックリー)は
心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。
そこで待っていたのは
豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)。
ハーパーが街へ出かけると少年、牧師、そして警察官など
出会う男たちが
管理人のジェフリーと全く同じ顔であることに気づく。
街に住む同じ顔の男たち、廃トンネルからついてくる謎の影、
木から大量に落ちるりんご、
そしてフラッシュバックする夫の死。
不穏な出来事が連鎖し、
“得体の知れない恐怖”が徐々に正体を現し始めるー。
・同じ顔の男性たちが登場する難解なストーリー
・美しい田舎町で繰り広げられる狂気狂乱
・観賞後は、グッタリすること間違いなし
・ラスト20分は目を背けたくなるほど、、、
『ミッドサマー』『ヘレディタリー/継承』を手掛けた気鋭の配給会社「A24」がタッグを組み、SFスリラー『エクス・マキナ』が第88回アカデミー賞®視覚効果賞を受賞し、脚本賞にもノミネートする快挙を果たした鬼才アレックス・ガーランド監督の最新作です。
完璧な構図と鮮やかな色彩で織りなす圧倒的映像美が不穏な物語を紡ぎ出す世界観は、観客を魅了すると同時に不思議な世界観へと没入させてくれます。
主演はNETFLIXオリジナル映画『もう終わりにしよう。』で脚光を浴び、2021年マギー・ギレンホール監督作『ロスト・ドーター』でアカデミー賞®助演女優賞へノミネートを果たした注目女優ジェシー・バックリーです。
本作は第75回カンヌ国際映画祭の<監督週間>で上映が行われ、その衝撃的な展開に度肝を抜かれる観客が続出し、特にラストへと展開する怒涛の20分は永遠のトラウマになること必至です。
しかしあまりにも難解なストーリーですので、観終わった後に頭の中が「?」だらけになってしまうことでしょう。
当ブログでは、『MEN 同じ顔の男たち』の気になる謎を徹底考察・解説していますので、観賞後のヒントになれば嬉しいです。
\31日間無料でお試し/
31日以内の解約なら無料♪
映画チケットが最大900円に!
【ネタバレあり】映画『MEN 同じ顔の男たち』のネタバレ一覧
ネタバレ①:本作のテーマ
本作のテーマは、”男性優位社会への皮肉と復讐”です。
というのも、本作に登場する男性はハーパーの夫ジェームズを除き、全ての男性たちの顔が屋敷の所有者であるジェフリーの顔をしております。
そして全ての男性たちがどこか嫌味な要素を持っており、いけすかない性格の持ち主ばかりなのです。
しかし男性たちは悪意を持ってハーパーに接しているわけではなく、「えっ?これが普通の対応ですけど何か?」といった雰囲気で接してくるので更にタチが悪いのです。
ハーパーの味方といえば、親友のライリーと女性警察官ぐらいですかね。
つまり、”男性たちは、無意識に男性優位性を振りかざしている”ということです。
これは長い間、人類が男性優位社会を築いてきたことの歪みでしょう。
そんないけすかない男性たちに対し、本作の主人公であるハーパーは嫌悪感を抱きながらも、物理的な手段で復讐を行います。
その結末がラストシーンに映るハーパーの笑顔なのです。
ネタバレ②:トンネルと波紋
本作では、トンネルと波紋が重要な役割を果たしています。
序盤でハーパーが散歩で訪れた森の中のトンネル、これが全ての始まりでした。
ハーパーは言葉遊びのつもりでトンネル内に自分の声を反響させます。
その声が波紋となってトンネル内に拡がり、トンネルの向こう側にいた何者かを呼び起こしてしまい、怪異現象が起きるのです。
おそらくトンネルは、”ハーパーの深層心理”を表しているのだと思われます。
夫ジェームズと喧嘩をしてしまい、その結果としてジェームズの自殺現場を目撃してしまった、というハーパーの心的ストレスは想像以上に過酷です。
そのためハーパーは、「自分は悪くない、自殺は私のせいではない」と思い込むようにしていたはずであり、その結果として自らにとって都合の良い世界を作り出していた可能性があります。
その自らにとって都合の良い世界への入り口がトンネルという形として描かれているのだと考えられます。
トンネルは必ずどこかに繋がっていますが、どこに繋がっているのかはわかりません。
それは同時に、”トンネルの先に誰がいるのかもわからない”ということも表しています。
森の中のトンネルは実際に存在している普通のトンネルですが、ハーパーの深層心理と重なり合うことで現実と幻覚の狭間のような空間に変わっていたのだと考えられます。
それに加えて、”トンネルの先に呼びかける=声を届ける=波紋を拡げる”ことにより、ハーパーの深層心理に眠っていたトラウマ、今回であれば「夫ジェームズへの罪悪感」、「男性への不信感」が呼び起こされ、そのトラウマが実体化(実際には実体化したように見えた)してしまったのです。
トンネル内でハーパーが自分の声を反響させていたとき、地面の水溜まりが何度も揺れて波紋が拡がっていました。
何度も意味深に映し出されていましたので、”波紋が拡がる=深層心理のトラウマを呼び起こす”ということを表しているのでしょう。
先程、ハーパーのトラウマを「夫ジェームズへの罪悪感」、「男性への不信感」と説明しましたが、トンネルの向こう側で目覚めさせてしまった存在は、どちらかと言うと”男性への不信感を実在化させた存在”である可能性が高いです。
というのも、薄汚れたハゲ頭の露出狂なんですよね。
この「汚い」、「ハゲ頭」、「露出狂」という三大要素がハーパーにとっての男性への不信感なのでしょう。
ネタバレ③:西洋タンポポの単為生殖
出典:IMDb
本作の象徴であるタンポポの綿毛ですが、これにはしっかりとした意味があります。
本作に登場するタンポポは、西洋タンポポです。
そして西洋タンポポは、受精することなく、単為生殖が出来るのが特徴です。
つまり、”自らのクローンを作り出し、数を増やすことが出来る”ということです。
本作ではたびたび西洋タンポポの綿毛が登場していました。
そして衝撃のラストシーンでは、西洋タンポポのように男性が自らのクローンを産み落としています。
このことからも西洋タンポポは、”永遠に増え続ける男性優位社会の闇”を表していることは明確です。
ネタバレ④:禁断の果実であるリンゴ
本作の舞台である中庭に植えられているリンゴの木。
思わずリンゴを食べたハーパーに対し、ジェフリーは「禁断の果実だからリンゴは食べてはいけない!」と冗談を言っていました。
禁断の果実といえば、”旧約聖書の『創世記』において、アダムとイヴが蛇に唆されて食べた善悪の知識の木の果実”が真っ先に浮かびます。
そして善悪の知識の木の果実=リンゴとして表現されているのも事実です。
つまり、”中庭に植えられているリンゴの木=善悪の知識の木”とも考えられます。
そうなると、ジェフリーは”ハーパーを堕落させる蛇=悪魔的な存在”ともいえるわけです。
そんなリンゴの木ですが、突然全ての実が地面に落下してしまいました。
この出来事は、”楽園であるエデンの園の崩壊”を表していると考えられます。
というのも、全ての実が地面に落下したことをきっかけに、ジェフリーと同じ顔をした男たちがハーパーに襲いかかってくるからです。
その様子はまるで”禁断の果実に手を出してしまったハーパーを、エデンの園から追い出そうとしている”ようにも感じられます。
ネタバレ⑤:インターネット回線が切れる理由
出典:IMDb
ハーパーが友人ライリーとテレビ電話をしていると、度々インターネット回線が切れて映像が乱れるシーンが多々ありました。
しかもインターネット回線が切れる際、「ライリーの顔が悪魔の顔になる」、「不審なメッセージが届く」などの怪奇現象が発生しています。
インターネット回線が切れる理由は、”ハーパーが幻覚世界に迷い込んでしまった”ことが原因と考えられます。
というのも、本作は現実世界と幻覚世界が入り混じった世界観で構築されております。
そもそもの話ですが、ジェフリーと同じ顔の人間が登場するのに対し、ハーパーはもちろんのこと周囲の人間が無反応なのは明らかに不自然です。
ハーパーは、夫ジェームズの自殺を目撃してしまった、というトラウマを抱えているため、精神状態が不安定です。
その過剰なるストレスから幻覚を見ている可能性が高いです。
そのため、インターネット回線が切れる=幻覚世界に迷い込んでいる、ということが考えられるのです。
ネタバレ⑥:魔除けであるシーラ・ナ・ギグ
出典:IMDb
教会に女性の陰部を見せつけている不気味な石像が置かれていましたよね?
あの石像は、”シーラ・ナ・ギグと呼ばれる、イギリスやアイルランドに伝わる魔除けの彫刻”です。
シーラ・ナ・ギグは、死と病などの厄を避けると言い伝えられております。
女性の陰部を厄除けとして捉えているようです。
しかし本作でシーラ・ナ・ギグが持つ役割は、厄除けではなく”繰り返される男性優位社会の悲劇”です。
衝撃的なラストシーンでは、何度も男性が生まれ変わりをしていました。
その際、シーラ・ナ・ギグのように女性の陰部を見せつけ、何度も生まれ変わりをしているのです。
本来であればシーラ・ナ・ギグは厄除けの役割を果たすはずですが、本作ではもはや呪いのように描かれていましたね。
ネタバレ⑦:森の精グリーンマン
出典:IMDb
シーラ・ナ・ギグと同様に本作を象徴するグリーンマン。
得体の知れない風貌なので驚いた人も多いのではないでしょうか?
グリーンマンとは、”葉で覆われている、もしくは葉で形作られた人頭像”のことです。
多くは中世の教会やロマネスク建築、ゴシック建築の柱や壁にモチーフとして彫られていました。
グリーンマンの意味については、多くの研究者によって様々な解釈が考えられましたが、統一した結論には至っていない、という不思議な存在です。
キリスト教以前のケルト神話と関係性があるとされております。
そんなグリーンマンですが、本作ではハーパーに恐怖を与える存在として登場します。
しかし単に恐怖を与えるだけではなく、ハーパーに何かを伝えようとしているんですよね。
印象的なシーンが、「グリーンマンがハーパーに対し、タンポポの綿毛を吹きかけるシーン」です。
先程も説明したとおり、西洋タンポポは胚珠が自己増殖して種子を形成する「単為生殖」を行います。
グリーンマンがタンポポの綿毛を吹きかけると同時に、明らかにハーパーの様子が変わりました。
それまでは男性や過去のトラウマに怯えるだけのハーパーでしたが、男性やトラウマに臆することなく立ち向かう力強い女性へと変わっているのです。
これは、”人類の発展に男性は必要ない”ということに気がついたからだと考えられます。
ネタバレ⑧:同じ顔の男性たち
本作には、屋敷の管理人であるジェフリーと同じ顔の男性たちが登場します。
しかしハーパーはもちろんのこと、周囲の人々も特に違和感を感じておりません。
これは、”実際のところ、男性たちは同じ顔をしていない”からです。
つまり、実際は男性たちは別々の顔をしているが、ハーパーにだけ同じ顔に見えていた、といことです。
ハーパーは、夫ジェームズの自殺を目撃してしまったというトラウマを抱えており、男性に対して不信感を抱いていたはずです。
その不信感とトラウマが過剰なストレスとなり、ハーパーに幻覚を見せていたと考えられます。
ジェフリーの顔だった理由は、”田舎町で1番最初に出会った男性であり、ハーパーの男性不信感を加速させた人物”だったからだと考えられます。
ハーパーが傷心旅行として訪ねた田舎町の屋敷ですが、ジェフリーは無意識にハーパーに対して不躾な対応をしていました。
そのことがハーパーの男性不信感を加速させる要因となり、出会う男性の顔全てがジェフリーの顔になってしまったのでしょう。
ネタバレ⑨:男性による単為生殖
衝撃的なラスト20分で行われる男性による単為生殖は、”永遠に増え続ける男性優位社会の闇”を表しています。
これは先程説明した、西洋タンポポを例に考えてみると一目瞭然です。
西洋タンポポのように無尽蔵に自らのクローンを産み出し続け、そして繁栄していく様子は、まさに地獄絵図そのものと言っても過言ではありません。
男性が陰部、腹、背中、口などあらゆる箇所から自らのクローンを産み出す様子は、生理的な気持ち悪さだけではなく、観客の心すらも抉るような気持ち悪さを醸し出しています。
そして最終的には、ジェフリーの顔ではなく、ハーパーの夫であるジェームズの顔の男性が産み出され、男性の単為生殖は終わりを迎えます。
まず男性の単為生殖ですが、これは”ハーパーが見た幻覚”です。
というのも、本作は現実世界と幻覚世界が入り混じった世界観で構築されております。
幻覚世界に迷い込んだ際、インターネット回線の接続が切れる等が考えられますが、極めつきは”グリーンマンに吹きかけられた西洋タンポポの綿毛”でしょう。
明らかにハーパーは、このシーンから様子がおかしくなっていました。
おそらくですが、グリーンマンの格好をした不審者は実在しており、その姿を見てしまったハーパーは、過去のトラウマやストレスが掛け合わさり、現実逃避をするために幻覚世界へ迷い込んでしまったのだと考えられます。
そう考えない限り、その後に発生する怪異現象を説明出来ないんですよね。
そして幻覚世界でハーパーが辿り着いた答えが、”単為生殖で産まれた夫ジェームズを殺し、トラウマを乗り越えること”だったのです。
実際にハーパーがジェームズを斧で殺したシーンは描かれておりませんでしたが、100%殺していると思われます。
むしろジェームズを殺さない限り、ハーパーは過去のトラウマを乗り越えることが出来ないわけですからね
ネタバレ⑩:ラストシーンの意味
出典:IMDb
本作のラストシーンは、友人ライリーがハーパーの元を訪ね、ハーパーが笑顔で微笑みかけるシーンで幕を閉じます。
このシーン、いくつか不可解な点があるんですよね。
・故障した車
・玄関から続く血溜まり
・血だらけの服を着たハーパー
・斧ではなく葉を持っているハーパー
上記の内容を考える限り、”ハーパーは現実世界で誰かを殺している”ということが考えられます。
残念ながら誰が殺されているかはわからないのですが、おそらく”グリーンマンの格好をした不審者”であると考えられます。
少年、神父、ジェフリーの可能性もありますが、こちらは幻覚世界で起こった出来事ですので、いわばハーパーによる妄想です。
そのため殺された可能性は低いと考えられます。
そして不審者グリーンマンを殺し、過去のトラウマを乗り越えたと思い込んでいるハーパーが友人ライリーに微笑みかける、というシーンになっているのです。
①ハーパーが不審者グリーンマンに襲われる
②ハーパーは家に逃げ込むが不審者グリーンマンに侵入される
③ハーパーは暖炉にあった斧で不審者グリーンマンを殺害する
つまり本作で描かれていた幻覚世界の裏側では、必死にハーパーが不審者グリーンマンの手から逃れようとしていたわけですね。
そして友人ライリーが妊婦というのも意味深です。
もし産まれてくる子供が男の子だった場合、”男性優位社会の闇が増え続ける暗示”を表しているからです。
ラストシーンまで不気味な余韻が残る映画ですね。
映画『MEN 同じ顔の男たち』の感想
かなり不気味で不快な気分になる映画でした。
前半の田舎町の美しさから一変し、中盤以降は意味不明な恐怖に襲われ続けることになります。
正直な話、ジェフリーと同じ顔をした男性たちの存在は、そこまで気になりませんでした。
むしろ背格好や髪型が異なるので、別の人物として考えていたくらいです。
ハーパーは夫ジェームズの自殺を目撃してしまったトラウマがあるのですが、夫ジェームズは自殺ではなく事故の可能性が高いと考えれれます。
というのも、ハーパーは夫ジェームズの落下中に目が合ってしまいますが、これって良く考えると不自然なんですよね。
普通に考えると、”上階のベランダから降りようとして、足を滑らして落下してしまった”というのが自然です。
そう考えると夫ジェームズの身体の向きが部屋にいるハーパー側に向いていたのも納得出来ます。
つまり、”ハーパーのトラウマは自分自身の勘違いだった”ということになるのです。
しかし勘違いも自分自身が信じていれば真実となります。
そんな印象的なシーンが、”ラスト20分の男性の単為生殖”ですね。
このシーンは明らかに現実ではなく、幻覚であることがわかりますが、ハーパーにとっては現実世界なのです。
トラウマを乗り越えたかのように見えたハーパーですが、ふとした出来事、例えば友人ライリーの出産などでトラウマが蘇ってしまう可能性は高いですね。
そうなると西洋タンポポの単為生殖のように、”永遠に増え続ける男性優位社会の闇”は消えることがないのでしょう。
まとめ
かなり難解なホラー映画です。
映画を観終わった瞬間、とてつもない疲労感が襲いかかってくることでしょう。
ハーパーが遭遇した怪奇現象について、明確な理由や原因が描かれていないため、全ては観客の想像に任されるかたちとなります。
そのような映画が好きな人にはハマるかと思いますが、そうでない人にはかなり厳しい映画です。
好き嫌いがハッキリと分かれる映画であることは間違いありませんが、ラスト20分の地獄絵図は是非一度は体験していただきたいものです。
\31日間無料でお試し/
31日以内の解約なら無料♪
映画チケットが最大900円に!
最後まで読んでくれてありがとうございました。