こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『イノセンツ』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『イノセンツ』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『イノセンツ』が好きになると思いますよ♪
映画『イノセンツ』のあらすじ
緑豊かな郊外の団地に引っ越してきた9歳の少女イーダ、自閉症で口のきけない姉のアナが、同じ団地に暮らすベン、アイシャと親しくなる。
ベンは手で触れることなく小さな物体を動かせる念動力、アイシャは互いに離れていてもアナと感情、思考を共有できる不思議な能力を秘めていた。
夏休み中の4人は大人の目が届かないところで、魔法のようなサイキック・パワーの強度を高めていく。
しかし、遊びだった時間は次第にエスカレートし、取り返しのつかない狂気となり<衝撃の夏休み>に姿を変えていく─ 。
・団地を舞台にした北欧発の超能力バトルホラー
・世界観がとても異質、そして不気味
・明るいホラー映画、まるで『ミッドサマー』のよう
・説明不足なシーンが多く、考察が捗る
大友克洋「童夢」からインスピレーションを得た驚異の映像に、世界が震撼&絶賛し、『ミッドサマー』や『LAMB・ラム』に続く北欧発のサイキック・スリラーです。
【ネタバレ】映画『LAMB ラム』考察【アダの正体と羊人間について】
第74回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、ノルウェーのアカデミー賞と呼ばれるアマンダ賞で驚異の4冠を獲得、世界の映画祭で16映画賞を受賞し、観客を絶賛と衝撃の渦に巻き込んだ問題作がついに日本へ上陸しました。
監督・脚本を手掛けたのは、ノルウェーを代表する映画監督ヨアキム・トリアーの右腕として『母の残像』『テルマ』などの脚本を共同で務め、『わたしは最悪。』で米アカデミー賞脚本賞にノミネートされた鬼才エスキル・フォクト監督です。
子供たちの夏休みを、かつて誰も見たことのない無垢なる恐怖で作り上げ、世界中に多くの熱狂的ファンを持つ大友克洋の傑作漫画「童夢」からインスピレーションを得た本作は、特異な世界観のみならず、不穏な予兆と驚きに満ちたサイキック描写においても傑出した迫真性を獲得しています。
大人が一切介在しない、子供たちの“危険な遊び”は予測不能な想像を絶する結末へと突き進んでいくのです。
当ブログでは、『イノセンツ』の気になる謎を徹底考察・解説していますので、観賞後のヒントになれば嬉しいです。
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【ネタバレあり】映画『イノセンツ』のネタバレ一覧
ネタバレ①:全てが逆さま
本作では、ポスターやエンドロールなどが逆さまに表現されています。
これは、”大人ではなく子供、健常者ではなく自閉症”ということを表しています。
本作の主人公たちは、超能力に目覚めた子供であり、また最も強大な超能力を持ち合わせているのは自閉症であるアナです。
つまり、”普通とは逆の人物が強大な力を持っている”ということを表現するため、あえて全てを逆さまにしているんですよね。
ネタバレ②:なぜ超能力に目覚めたのか
子供たちが超能力に目覚めた理由は、本作でははっきりと描かれませんでした。
しかし子供たちの家庭環境から考えると、自然と理由は判明していきます。
①アナ
・自閉症で上手く感情表現や言葉を話すことが出来ない
・意思疎通をするためには、テレパシーの超能力が必要
・アイシャと出会うことで、テレパシーの超能力に目覚める
・ベンと出会うことで、サイコキネシスの超能力に目覚める
②イーダ
・両親がアナばかりに愛情を注いでいると感じ、アナに対して、腕や脚をつねる、靴にガラスの破片を入れるなど、過激な行動をとる
・虫を意図的に殺すなど残虐性が出ていたが、より残虐性を持ち合わせるベンと出会い、不安を抱くようになり、自己防衛だけでなく、他人を助ける使命を感じるようになる
・周囲の超能力を通じて他人の立場に立ち、共感し、支援する能力に目覚める
③アイシャ
・母親と2人暮らしのため、母親の感情を理解しようとしてテレパシーの超能力に目覚める
・他人への思いやりの心で、テレパシー能力が更に強くなる
④ベン
・ネグレクトの母親の元で育ち、現状への不満からサイコキネシスの超能力に目覚める
・超能力を歯止めのない好奇心や自己顕示、復讐に使用する
・内に秘めた怒り、無力感からくる暴力性や攻撃的な側面が行動に反映される
・母親からの無視や虐待によって彼が感じていた不安や怒りが、超能力の使用に反映される
つまり、”子供たちは、現状を打破しようとお互いが共鳴し合い、超能力に目覚めた”ということです。
団地そのものが影響している、引っ越してきたアナとイーダの影響なども考えられますが、1番しっくりするのは、子供たち4人の波長が合ったからだと考えられます。
ネタバレ③:タイトルの意味
本作のタイトルであるイノセンツは、元となっている「innocent」という言葉を和訳すると”無垢な、無邪気な、という意味”になります。
無垢な子どもたちが超能力によって起こす出来事を通して、子供たちが新たな感情を理解し、成長していく一種の成長物語でもあります。
また「innocent」には、他にもこんな意味があります。
それは、”世間知らず”です。
子どもたちが手に余る能力を手にした時、その力をどのように扱うのか、そしてどのように解決するのか、子供たちの超能力が親や大人には認識されず、彼らが内に秘めた葛藤や不安を抱えて戦っている姿を意味しています。
そして何より”私たち観客たちに向けたメッセージ”のようにも感じられます。
世間知らずな子供たちが抱える感情や欲求、成長を通じて大人の助けが必要なこと、そして何より超能力を制御する必要性があることを表しています。
ネタバレ④:ベンが暴走した理由
ベンが暴走した理由は、”ネグレクトの母親の元で育ち、自尊心が高くなってしまったから”です。
ベンは母親から愛情を注がれず、またアザなどもあることから、母親から日常的に虐待を受けていたと考えられます。
団地内の子供たちとも打ち解けることが出来ず、年上の子供からイジメられていました。
またアイシャが遊びの中でベンのことを笑った際、急に激昂したシーンもあったことから、ベンは非常に自尊心が高い人物であることがわかります。
だからこそ超能力という強大な力を手に入れてしまった際、コントロールが効かず、自らの欲求を叶えるために使用してしまったわけですね。
ベンは、猫の頭を平気で踏み潰すほどの残虐性を持ち合わせていました。
そんなベンに更なる力である超能力が備わってしまったら、そりゃ暴走もしてしまいますよね。
ネタバレ⑤:4人の超能力
4人の超能力は、次のとおりです。
①イーダ
・他人の超能力を増幅させる
・他人から力を借りる
②アナ
・サイコキネシス、テレパシー、他人の超能力を増幅させる
③アイシャ
・テレパシー、他人の感情や怪我を共有できる
④ベン
テレパシー、サイコキネシス、他人を操ることが出来る
特にイーダは、中盤までは超能力を持っていないような描写として描かれていましたが、終盤で自ら足にはめたギブスを割り、アナと一緒にベンを倒そうとした際に超能力に目覚めています。
ネタバレ⑥:力を増幅させる超能力は誰のもの?
他人の超能力を増幅させる能力は、当社はアナかと思っていましたが、”ラストシーンの超能力バトルでイーダが増幅させる能力者”であることがわかります。
もちろんアナも他人の超能力を増幅させる能力を持っていますが、イーダのほうがアナより増幅させる能力が高いのでしょうね。
そして団地の子供たちが力を貸したのも、イーダの能力であると考えられます。
ネタバレ⑦:団地の子供たちは超能力を持っているのか?
ラストシーンで、アナ&イーダvsベンの超能力バトルを見学していた団地の子供たちがいました。
この子供たちは、超能力を持っているのでしょうか?
個人的には、”子供たちは超能力を持っておらず、イーダが子供たちの力を借りている”という状態だと考えられます。
詳細は後ほど考察していますが、イーダの能力こそが「他人の超能力を増幅させる」ものであり、同時に「他人の力を借りることが出来る」能力も持ち合わせているのだと考えられます。
ネタバレ⑧:ベンが作り出した世界
ベンが他人を操る際に作り出す世界は、”相手の心の底に眠る恐怖の象徴を具現化する”という特性があります。
イーダの場合は蛇、そしてアイシャの母親にはアイシャ自身が恐怖の象徴として具現化されていました。
アイシャの母親は、心の病を抱えながら1人で娘を育てていかなければならない、という責任感に押し潰されそうになっていたのだと考えられます。
そのため、その責任感が故に母親はアイシャに恐怖を感じていた、という可能性が高いです。
だからこそ母親には、アイシャの姿が化け物に見えていたわけですね。
ネタバレ⑨:モデルとなった作品
本作のモデルとなった作品は、”大友克洋が描いた漫画「童夢」”です。
『童夢』は『AKIRA』でおなじみの大友克洋によって1980年から1981年に連載され1983年に単行本化されました。
エキスル・フォクト監督が漫画「童夢」からインスピレーションを得たと公言しているとおり、北欧版「童夢」と言っていいほど「童夢」がベースとなったストーリーに仕上がっています。
団地を舞台にした超能力をテーマにした部分、そして終盤のサイキックバトル展開は、原作と言ってもおかしくないくらいに影響を与えていることが感じられます。
特に、終盤の超能力者たちによる、一般人には見えない中で戦っている描写は、原作マンガを実写化したと言えるくらいに近いものがありました。
団地と言えば、様々なな家庭の事情を持った家族が集まっている、という点も本作との共通点です。
アナと同じように障害を持ったヨッちゃんという大柄で超能力を持った青年が登場していたり、ベンと同じようにネグレクトにあっている吉川君という少年が登場しています。
イーダも障害をもつ姉を持つことで周りの目を気にしてしまったり、両親の愛情に飢えている、ということがわかるシーンが見て取れます。
いろいろな家庭の事情をもつ団地を舞台にすることで、それぞれの子供たちの微妙な心情が見て取れる作品となっております。
とはいえ、全体的に見ると『童夢』とはテイストが異なり、『イノセンツ』は、より一層ホラー映画としての特性を強く感じさせる内容に仕上がっています。
ネタバレ⑩:ベンが母親を殺した理由
ベンが母親を殺した理由は、”ネグレクトの母親に愛情を持って育ててこられなかったから”です。
母親はシングルマザーですので、経済的そして精神的ストレスがかかっていたと考えられます。
そのストレスを自分より弱い立場であるベン矛先が向けており、その結果が虐待やネグレクトに繋がっていたわけですね。
そのためベンも、自分より弱い立場であるネコにストレス発散の矛先を向けており、猫を殺してしまいました。
きっとベンは、この他にも自分より弱い立場である虫や動物を虐殺してきたのでしょうね。
そんなベンですが、物を操るサイコキネシスの超能力に目覚め、母親の頭に鍋を落とし、そして沸騰したお湯のかけて殺してしまいました。
この時に救急車を呼ぶなどして助けることも出来たのですが、ベンはそのまま母親を見殺しにしてしまうんですよね。
これは”潜在意識として、母親の支配から解放されたい”という想いがあったからだと考えられます。
そして母親を見殺しにしてしまったことにより、ベンにドス黒い感情が芽生えてしまいます。
そのドス黒い感情がきっかけとなり、他人を操る超能力に目覚めてしまうのです。
ネタバレ⑪:ラストシーン
ラストシーンでは、”アナ&イーダvsベンの超能力バトル”が繰り広げられます。
当初はベンが優勢かと思われましたが、団地に住む子供たちの力を借りて、アナ&イーダが勝利します。
この時に団地に住む子供たちが力を貸している理由が不明なんですよね。
おそらくですが、”これはイーダの超能力”なんでしょうね。
他人の力を増幅させる超能力を持っているイーダですが、アナと一緒にいることで更なる超能力に目覚め、無意識のうちに団地に住む子供たちの力を借りることが出来るようになったのだと考えられます。
そしてベンを殺すことが出来たアナとイーダですが、アナはいつも通りに感情を押し殺してしまう反面、イーダは「人を殺してしまった」という罪悪感を抱き、母親の胸に泣きつきます。
これは、”イーダが子供から大人になる成長過程”を表しています。
映画『イノセンツ』の感想
映画『ミッドサマー』や『ハッチング 孵化』のような、北欧特有の明るいシーンが多く、独特な雰囲気のホラー映画です。
【ネタバレ】『ハッチング 孵化』考察【アッリの正体と目的とは?】
明るいながらも、不気味な音楽のカメラワークで終始不安感をあおり、「次はいったい何が起きるんだ…?」と期待させてくれます。
冒頭から、いきなり団地に引っ越してきたと思ったら、突然超能力が開花しますからね…意味がわかりません。
この意味不明さも本作の魅力ですね。
とにかく説明が一切されることなく、物語が進んでいきますので、必死にしがみつかないと振り落とされてしまいますね。
なぜ子供たちが超能力を身につけたのか、この理由がはっくりと説明されないので、「この団地に何か秘密があるのか?」、「他の子供たちも超能力に目覚めているのか?」など様々な考えが頭の中を駆け巡ります。
そして結局のところ、明確な説明はありませんでしたからね。
この辺りは、好きな人もいれば嫌いな人もいる、好みが分かれるところですね。
序盤は、子供たちの微笑ましい遊ぶシーンかと思いきや、猫の頭は踏み潰す、母親は精神不安定だったりネグレクト、もしくは自閉症の姉のみに執着する、いじめっ子の存在、そして超能力による復讐など盛り沢山です。
特に猫の頭を踏み潰すシーンは、「お前(ベン)の頭も同じように踏み潰してやろうか!?」と思えるほど殺意を抱くこと間違いなしです。
少しずつ明らかになる超能力の秘密…特に自閉症であるアナがサイコキネシスの能力に目覚め、アイシャの助けを借りながらも話せるようになるシーンは、とても良かったですね。
そしてなんといっても本作のMVPは、ヴィランであるベンです。
性格が捻じ曲がった少年が超能力を手に入れるとロクなことにならない、それを地でいくキャラクターでしたね。
猫の頭を踏み潰したときから、頭がおかしいとは思ってましたが、まさかこれほどとは…自分にとって気に入らない人物を次々と殺す、もしくは大怪我をさせていきます。
特にアイシャをアイシャの母親を操って殺すシーンは、残酷過ぎましたね。
最近の映画で、ここまで直接的に子供を殺す映画ってなかったのでは?と思えるほど、残忍に殺していますからね。
しかも母親を操って殺すとか、タチが悪過ぎます。
母親といえば、ベンがネグレクトである母親を見殺しにして、そこからベンが暴走していく様も、切なさがあり良かったです。
愛情が足りなかったかもしれない母親でも、しっかりとベンの理性を保つストッパーとして役割を果たしていたんですね。
そんな暴走するベンに対し、ラストシーンでアナとイーダ、そして子供たちが協力し、静かに立ち向かうシーンはとても神秘的でした。
このラストシーンだけを見ると、どうやらアナではなくイーダのほうに「他人の超能力を強くさせる」パワーがあるように見えてなりませんでした。
実際はどうなんですかね?
きっとイーダなんでしょうね、超能力を増幅させるのは、もしくは覚醒したか。
団地に住む子供たちが、超能力バトルに注目しているのも意味深でしたね。
子供だから感じとったのか、もしくはイーダの能力なのか…このあたりは明らかにされませんでした。
もし子供だから、ということになると、もう団地そのものに何か特別な力があるということになります。
そうすると第二のベンが登場するかもしれませんね。
まあ続編はないかと思いますが、第二のベンが登場したら、再びアナとイーダのコンビで撃退するんでしょうね。
まとめ
とても不思議かつ不快な気分になれるホラー映画です。
子供たちの純粋無垢、そして世間知らずな言動により、団地内で様々な現象が発生していきます。
そしてヴィランであるベンの暴走を止めるため、大人の力を借りることなく子供たちだけで解決する姿を描いています。
かなりストーリーが難しく、また説明不足な箇所が多々あるので、とても考察が捗る映画ですね。
エスキル・フォクト監督の次回作にも要注目ですね。
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最後まで読んでくれてありがとうございました。