こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』が好きになると思いますよ♪
映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のあらすじ
国際問題からアート、ファッション、グルメに至るまで深く切り込んだ記事で人気を集めるフレンチ・ディスパッチ誌。
編集長アーサー・ハウイッツァー・Jr.のもとには、向こう見ずな自転車レポーターのサゼラック、批評家で編年史家のベレンセン、孤高のエッセイストのクレメンツら、ひと癖もふた癖もある才能豊かなジャーナリストたちがそろう。
ところがある日、編集長が仕事中に急死し、遺言によって廃刊が決定してしまう。
・夢の中に迷い込んだかのような映像体験!
・幻想的な色彩とカメラワークに癒される♪
・カラー、モノクロ、アニメーションが掛け合わさった世界観
・ラストシーンのセリフは思わず涙すること間違いなし!
本作は「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ヶ島」のウェス・アンダーソン監督が、フランスの架空の街にある米国新聞社の支局で働く個性豊かな編集者たちの活躍を描いた長編第10作目です。
(2024/11/21 15:37:58時点 Amazon調べ-詳細)
ウェス・アンダーソン監督らしさ満載の世界観なので、娯楽映画というよりは芸術映画といった感じです。
そのためストーリーがわかりにくく、何が起きているのかもわかりにくいです。
あくまで本作はストーリーを楽しむ映画ではなく、映像を楽しむ芸術映画です。
そこを念頭に置いておかないと、非常に残念な結果になりますのでご注意を!
【ネタバレあり】映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』のネタバレ一覧
ネタバレ①:タイトルの意味
タイトルでもある「フレンチ・ディスパッチ」は、アメリカの新聞「カンザス・イヴニング・サン」の別冊であり、フランスの架空の街アンニュイ=シュール=ブラゼに編集部を構える人気雑誌です。
非常に個性豊かな編集者と記者たちを抱えており、国際問題、政治、アート、ファッション、フードなどを記者独自の目線で記事にしているため、世界的に人気のある雑誌となっております。
ちなみに「フレンチ」はフランス語・フランス人という意味、「ディスパッチ」は発送・届くという意味です。
本作は個性豊かな記者たちが独自の目線で取材し記事を書いています。
そのため「フレンチ・ディスパッチ」の意味は、”フランス現地から届いたニュース”になるかと思われます。
本作はタイトルが長いのでわかりにくいのですが、次のように整理するとわかりやすいかと思われます。
①「フレンチ・ディスパッチ」
→フランス現地から届いたニュース
②「ザ・リバティ、カンザス」
→アメリカのカンザス州リバティ市
③「イヴニング・サン」
→夕刊紙
④「別冊」
→別冊
つまりタイトルの意味は、”アメリカのカンザス州リバティ市の夕刊紙の別冊でフランス現地から届いたニュース”ということになります。
ネタバレ②:名物編集長アーサー・ハウイッツァーの死
非常にクセがある本作ですが、雑誌「フレンチ・ディスパッチ」の創設者である名物編集長アーサー・ハウイッツァーが心臓麻痺で急死してしまいます。
ハウイッツァーの遺言により「フレンチ・ディスパッチ」は廃刊、従業員はボーナスを貰って解職となり、ハウイッツァーの追悼号は「フレンチ・ディスパッチ」の最終号として巻頭を合わせ4つの記事を掲載することになりました。
この4つの記事の取材背景を追っていくのが本作の流れです。
ちなみに4つの記事を取材している時は、まだハウイッツァーは生きています。
時間軸としては、こんな感じです。
①4人の記者が取材
②4人それぞれがハウイッツァーと意見交換
③誰の記事を巻頭記事にするか議論→冒頭シーン
④ハウイッツァーが心臓麻痺で急死
⑤皆んなで追悼記事を書く→ラストシーン
時間軸を整理しておかないと、頭の中が混乱してしまいます。
ネタバレ③:エルブサン・サゼラックの記事
1つ目の記事を担当するのはエルブサン・サゼラック、雑誌最終号の巻頭記事を飾る記者です。
サゼラックは自転車に乗り、フランスのアンニュイ=シュール=ブラゼをリポートするという取材スタイルが特徴的な記者です。
アンニュイは職人の街として栄え、石造りの美しい建物が建ち並んでいます。
昼の姿だけを見れば、すぐにでも移り住みたくなるような街です。
しかし夜になると姿は一変し、街の地下にはネズミが大量に住んでおり、建物の屋根にはネズミを狙ったネコが沢山集まってきます。
また街には売春婦や男婦が集まって来るのです。
サゼラックはそんなアンニュイの裏の姿を記事にしました。
もちろんサゼラックほどの記者であれば、アンニュイの綺麗な街並みや住民の人柄などを記事にすることも出来たでしょう。
しかしそれだけではアンニュイのわずかな一面を映し出しているに過ぎません。
サゼラックはアンニュイの本当の姿、つまり”人々があえて目を逸らしてきた真実”を記事にしたのだと思います。
しかしあまりにアンニュイの裏の姿を忠実に記事にしてしまったため、亡くなった編集長ハウイッツァーからは、「流石に下品過ぎる・・・花屋を加えられないか?」と言われてしまうほどでした。
もうこの時点から普通の記事じゃない匂いがプンプンしてきて面白いです。
ネタバレ④:J・K・L・ベレンセンの記事「確固たる名作」
続いて2つ目の記事を担当するのは、美術界に精通しているJ・K・L・ベレンセンです。
彼女はフレンチ・スプラッター派アクション絵画の先駆者モーゼス・ローゼンターラを記事にしました。
そんな物騒な絵画の先駆者モーゼスですが、元々はユダヤ系メキシコ人の牧場主の父を持つ裕福な生まれでした。
しかし美術大学を卒業後、放浪の旅に出発し徐々に精神が崩壊、挙げ句の果てにはバーテンダー2人を殺し、殺人の罪で50年間刑務所に服役することになってしまいました。
服役してからの10年間は特に何もせず過ごしていましたが、11年目に「このままでは自殺してしまう。何か変わらなければ・・・」と思い立ち、刑務所の「特別活動」に参加することにしました。
モーゼスは美術大学を卒業しているため、陶芸や絵画などの美術の才能が開花し、女性看守シモーヌをモデルに絵を描くようになります。
モーゼスとシモーヌは恋仲になり結婚するかと思いきや、モーゼスの求婚をシモーヌが断ってしまいます。
そのため2人の関係性は「友情以上、恋人未満」といった感じでしょうか。
そしてモービスがシモーヌをモデルとして描いた絵が、同じく服役していた美術商のジュリアン・ガタージオに注目され、瞬く間にモーゼスの絵は世間の注目を浴びて桁違いの富を生み出す物になっていくのです。
モービスの絵は世間で有名になりましたが、そうなると望まれるのは新作です。
しかしモービスは3年の月日が経過しても新作を完成させず、ガタージオは痺れを切らし怒り狂います。
そして遂にモービスの新作が完成し、ガタージオは出資者や投資家、評論家を引き連れモービスの元を訪ねます。
確かにモービスの新作は完成していましたが、新作の絵画は刑務所にある趣味室の強化セメントの壁に直接描かれていたのだから大変!ガタージオはブチ切れてしまいます。
シモーヌの呼びかけもあり和解したモービスとガタージオの元に、刑務所を脱走した脱獄囚がなだれ込んできます。
何人かは脱獄囚に襲撃され亡くなりますが、今度はモービスがブチ切れ脱獄囚をことごとく叩き潰します。
それが結果として出資者や投資家、いわゆる上流階級の人々を救うことになり、モービスは仮釈放されることになるのです。
絵画はガタージオの叔母に購入され、20年の月日をかけて趣味室ごと軍用機に乗せ、前衛美術館に収められることになります。
芸術に対する想い、渦巻く思惑と権力、そして巨万の富をカラーやモノクロ映像を駆使して描いています。
モービスとシモーヌの関係も発展しそうで発展しない・・・観客側からするとモヤモヤしてしまったかもしれません。
しかしそれで良かったのだと思います。
もしモービスとシモーヌが恋人、もしくは夫婦になってしまったら最後の新作は描かれなかったと思うので・・・
ネタバレ⑤:ルシンダ・クレメンツの記事「宣言書の改定」
続いて3つ目の記事を担当するのが独身女性ジャーナリストのルシンダ・クレメンツです。
クレメンツは、アンニュイ=シュール=ブラゼで行われている学生デモについて取材をしました。
そこでクレメンツは、学生デモの主導者であるゼフィレッリと出会い、「宣言書を校正してほしい」と相談を受けます。
この出会いをきっかけに2人は付き合うようになるのです。
ゼフィレッリが学生デモを起こすきっかけになったのが、兵役に行った友人のミッチミッチが脱走して逮捕されたからです。
国の都合で兵役に行かされ、脱走すると犯罪者として逮捕される、ここに矛盾点と怒りを感じたのでしょう。
「国や大学は若者の自由を妨げている」、そう感じたゼフィレッリは「若き理想主義者運動」を立ち上げ、国や大学を相手取り講義を続け、最終的にはチェス革命が勃発、大学側とチェスで決着をつけることになります。
しかしゼフィレッリに恋する「若き理想主義者運動」の会計士ジュリエットが、何かと学生デモに関わってくるクレメンツに嫉妬し対立し、大学側から「タイムオーバー」の通知とともに催涙弾を撃ち込まれてしまいます。
その際クレメンツは、「学生デモより青春を謳歌しなさい」と2人にメッセージを送り、2人は恋人となり幸せな生活を送ることになります。
しかしゼフィレッリは、海賊電波塔で宣言を読み上げている際、電波塔で感電し川に落下し溺死してしまいます。
まさかティモシー・シャラメを死なせるとは思わなかったですね。
2021年公開の『DUNE /デューン 砂の惑星』で衝撃的な美しさと強さを魅せてくれた俳優だったので、本作でこのような展開になるとはびっくりしました。
(2024/11/21 03:55:27時点 Amazon調べ-詳細)
クレメンツの記事は学生運動をテーマにしているので、若者の抱える社会や将来への不安や不満が上手く描かれていて好きです。
ネタバレ⑥:ローバック・ライトの記事「警察署長の食事会」
続いて4つ目の記事を担当するのは、ローバック・ライトです。
彼は祖国を追放された異邦人であり、同時に抜群の記憶力を持っている優れた記者です。
ライトは、アンニュイ警察署長専属の有名シェフであるネスカフィエについて取材しました。
しかし警察署長と食事をしていると、警察署長の1人息子ジジが気球で誘拐されてしまいます。
犯人は警察署長の運転手ジョーであり、要求は「悪徳弁護士アバカスを釈放しなければ、1人息子ジジを殺す」というものでした。
必死の操作で犯人のアジトを突き止めた警察は、犯人たちと激しい銃撃戦になります。
しかしジジが密かに送ったモールス信号「シェフを送れ」を読み解き、お腹が空いた犯人たちの元へネスカフィエを送り込みます。
ネスカフィエが犯人たちの元へ辿り着き料理を振舞いますが、警戒しているジョーはネスカフィエに毒味をさせるのです。
もちろん料理には犯人たちを殺すための猛毒が入っております。
しかし警察署長の1人息子ジジを助けるために、ネスカフィエは猛毒が入った料理を臆することなく口にするのです。
ネスカフィエが毒味をして安心なことを確信した犯人たちは、料理を口にしますが猛毒が入っておりますので次々と倒れていきます。
ジジは大根が嫌いだったため料理を口にしないため、命に別状はありません。
しかし犯人のジョーも大根嫌いだったため、ジジは再び誘拐されてしまうのです。
警察の必死の追跡により、犯人のジョーの車は海に落下、ジジは落下寸前にパトカーへ飛び乗り無事でした。
全てはネスカフィエが命をかけて猛毒料理を口にしたおかげです。
そうなんです!ネスカフィエは古今東西の様々な料理を口にしてきた影響で、胃袋が超人的な強さになっていたので、猛毒料理を口にしても一命を取り留めていたのです。
まさにあの夜のディナーは、ネスカフィエにとって一世一代のディナーと言っても過言ではないでしょう。
そんなネスカフィエにライトが尋ねます、「猛毒とわかっていたに、どうしてやり遂げられたのですか?」、するとネスカフィエが次のように答えます。
「皆んなから失望されたくなかっただけです。私は異邦人ですから・・・」
するとライトも「私もです」と答えるのでした。
ネタバレ⑦:追悼記事
こうして4つの記事が完成しましたが、肝心な編集長ハウイッツァーの追悼記事が完成しておりません。
悲しみのあまり、誰が何を書くのかも決まっていないのです。
なかなか担当が決まらない中、ライトがこう言います。
「皆んなで一緒に書こう。死亡記事なんだから楽しくワイワイと♪」
ラストシーンの言葉に記者としての心得が詰まっているように感じました。
というのも、記者は読者が読んでくれる、もしくは楽しんでもらえる記事を書くことが求められております。
そのために時間をかけて綿密な取材を行うのです。
フレンチ・ディスパッチの記者たちは、ハウイッツァーと長い間記事について意見交換を交わしてきました。
その中でハウイッツァーの意思、感情を知りながら記事をブラッシュアップしてきたのです。
つまり記事の中にはハウイッツァーの意思や感情が含まれているということです。
もっと言ってしまえば、記者たちはハウイッツァーの取材をしていたとも言えるでしょう。
しかし1人の記者だけでは、ハウイッツァーの取材を完遂出来たとは言えません。
だからこそ同じようにハウイッツァーの取材を続けてきた他メンバーの力が必要なのです。
ラストシーンのセリフ、「皆んなで一緒に書こう。死亡記事なんだから楽しくワイワイと♪」にはそんな記者たちのハウイッツァーに対する想いが込められていたのだと思います。
素敵なセリフですよね♪
映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』の感想
まるで夢の中を彷徨っているかのような感覚に陥る映画です。
流石はウェス・アンダーソン監督ですね。
独特な世界観を任せたら、この監督の右に出るものはいないと思います。
(2024/11/21 15:37:58時点 Amazon調べ-詳細)
そんなウェス・アンダーソン監督の最新作ということもあり、期待値MAXで観てきました。
正直な話、メチャクチャ難解な映画でした。
というのも、観客が何かを考えるよりも先に映像が次から次へと映り変わっていくんですよね。
そのため観客は「何が起きているかわからない」という感覚に陥ります。
まさにウェス・アンダーソンの世界を夢の中のように彷徨う、といった感じです。
きっと苦手な人もいるでしょう・・・「高い料金を支払って映画を観に来ているのに、意味が全くわからない!」、そう言われても無理はないかと思います。
しかし私は「映画ってそれでも良いんじゃない?」と思うんです。
映画って娯楽であると同時に芸術だとも思うんです。
確かに娯楽映画であれば、わかりやすい映画のほうが良いと思います。
しかし芸術映画であれば、観客は全てを理解する必要もないと思います。
だって美術館に行って芸術作品を観賞するとき、全てを理解出来ていますか?
きっと出来ていないですよね?
理解しようと思っても理解出来ない、それでも楽しい・幸せな気持ちになれるのが芸術だと思います。
間違いなく本作は娯楽映画ではなく芸術映画です。
芸術映画である以上、深く考える必要はなく、ありのままの映像と音楽を楽しめば良いと思います。
まとめ
とても難解であると同時に、とても綺麗な映画です。
綺麗と言っても映像だけではなく、ストーリー、映像、カメラワーク、俳優の言動、全てが綺麗なのです。
「夢の中を彷徨っているかのような映像体験」、まさにこの言葉がふさわしい映画だと思います。
まさにウェス・アンダーソン監督の魅力が詰まった映画であり、ファンには堪らないことでしょう。
しかしながら、監督のファンではない人には少し退屈に感じてしまうかもしれません。
派手なアクション映画、感動するラブロマンスなどを求めている人には向いていない映画です。
多少観る人を選んでしまうかもしれませんが、たまには意味不明な映像体験をダイレクトに味わってみるのも良いんじゃないでしょうか。
だって映画は娯楽であると同時に芸術でもあるわけですから・・・
最後まで読んでくれてありがとうございました。