こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『イニシェリン島の精霊』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『イニシェリン島の精霊』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『イニシェリン島の精霊』が好きになると思いますよ♪
映画『イニシェリン島の精霊』のあらすじ
島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、気のいい男パードリックは長年友情を育んできたはずだった友人コルムに突然の絶縁を告げられる。急な出来事に動揺を隠せないパードリックだったが、理由はわからない。賢明な妹シボーンや風変わりな隣人ドミニクの力も借りて事態を好転させようとするが、ついにコルムから「これ以上自分に関わると自分の指を切り落とす」と恐ろしい宣言をされる。美しい海と空に囲まれた穏やかなこの島に、死を知らせると言い伝えられる“精霊”が降り立つ。その先には誰もが想像しえなかった衝撃的な結末が待っていた…。
・『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督の最新作
・架空のイニシェリン島を舞台に重厚な人間模様を描く
・アイルランド内戦が時代背景となり、物語に深みを増している
・相手を許す「あいこ」の重要性と難しさ
第74回ヴェネチア国際映画祭で脚本賞、続く2017年度トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞、さらに主演のフランシス・マクドーマンドに2度目のアカデミー賞主演女優賞をもたらし、その年、映画ファンを最も興奮、震撼させた傑作『スリー・ビルボード』の監督であり、演劇界・映画界の最前線に立つ鬼才マーティン・マクドナーの全世界待望の最新作です。
アイルランド内戦を時代背景に、人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた人間ドラマに仕上がっています。
「ヒットマンズ・レクイエム」でもマクドナー監督と組んだコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが主人公パードリックと友人コルムをそれぞれ演じており、共演は「エターナルズ」のバリー・コーガン、「スリー・ビルボード」のケリー・コンドンが脇を固めています。
2022年・第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門でマーティン・マクドナーが脚本賞を、コリン・ファレルがポルピ杯(最優秀男優賞)をそれぞれ受賞し、第95回アカデミー賞でも作品、監督、主演男優(コリン・ファレル)、助演男優(ブレンダン・グリーソン&バリー・コーガン)、助演女優(ケリー・コンドン)ほか8部門9ノミネートを果たしている話題作です。
当ブログでは、『イニシェリン島の精霊』の気になる謎を徹底考察・解説していますので、観賞後のヒントになれば嬉しいです。
\31日間無料でお試し/
31日以内の解約なら無料♪
映画チケットが最大900円に!

【ネタバレあり】映画『イニシェリン島の精霊』のネタバレ一覧
ネタバレ①:アイルランド内戦について
本作の時代背景は、”1922年から1923年に起きたアイルランド内戦”です。
【アイルランド内戦について】
・アイルランド独立戦争後、アイルランド自由国を成立
・支配権をめぐって英愛条約を推進する暫定政府と反条約派のアイルランド共和国軍(IRA)が争った武力闘争
本作では、このアイルランド内戦が重要な役割を果たしています。
というのも、本作で仲違いするパードリックとコルムの分断は、”アイルランド本島で起きている内戦と鏡映しになっている”んですよね。
もちろん内戦と喧嘩というスケールの大小はありますが、”パードリックとコルムの小競り合いが、島の向こうの大喧嘩と同時進行している”のです。
実際にアイルランド内戦では、兄弟同士、友人同士が衝突し、歴史的に恐ろしい残虐行為が繰り広げられました。
本作でもコルムが指を切断したり、パードリックが家屋に火を放ったりしていましたが、それらの行為をスケールアップさせた行為がアイルランド内戦では起こっていたということです。
例えるなら、”パードリックとコルムの喧嘩は小規模アイルランド内戦”って感じですね。
本作では、アイルランド内戦を意識しながら観賞すると、理解度が増してきます。
(2024/01/24 21:05:39時点 Amazon調べ-詳細)
ネタバレ②:イニシェリン島について
本作の舞台は、アイルランド島の西に広がるアラン諸島の1つイニシェリン島です。
そして実は、”イニシェリン島は、実在しない架空の島”なのです。
本作の監督であるマーティン・マクドナーは、かつてアラン諸島を舞台にした『イニシュマン島のビリー』、『ウィー・トーマス』の2作を執筆しています。
その中でかつてボツにした『The Banshees og the Inisheer』という戯曲を書いたことがあり、題名が気に入っていたので、いつか使用したいと考えていました。
その結果出来上がったのが本作であり、ある意味アラン諸島3部作の3作目といえる作品に仕上がっています。
また撮影は、アラン諸島の島々と同じ雰囲気を出したいと考えていたため、本作の大部分をイニシュモア島で撮影しました。
ネタバレ③:なぜ2人は喧嘩したのか
本作では、パードリックとコルムがなぜ喧嘩をしたのか明確な理由が明かされておりません。
しかし2人の言動から、喧嘩の原因を推測することが出来ます。
2人が喧嘩をした理由は、”コルムがパードリックに退屈さを感じてしまったから”です。
コルムは歳を重ねるにつれて、心の静けさや安らぎを求めるようになっていきました。
しかしパードリックとの会話は、退屈で中身もなく、ただの時間の無駄とも思える内容だということに気がついてしまったのです。
またアイルランド本島で勃発している内戦の影響により、コルムはより死を身近に感じ取り、その影響から精神を病んでしまっていました。
限りある人生の時間を退屈な会話で浪費するのではなく、もっと有意義なことに使いたい、そう考えたコルムは、パードリックと過ごす時間よりも音楽の作曲に時間を割くようになります。
コルムが音楽の作曲に時間を割いている理由は、”音楽は永遠に残るから”です。
音楽や絵画といった芸術は、何百年後の後世にも語り継がれていきますが、ただの優しさは永遠には残らず、50年後には綺麗さっぱり忘れ去られてしまいます。
だからこそコルムは、後世に語り継がれる音楽を生み出したい、そのためには限りある時間を有効に使いたい、という理由からパードリックと絶縁することにしたんですね。
一方でコルムから絶縁宣言を突きつけられたパードリックは、突然の出来事に頭の理解が追いつけず、執拗にコルムに絡み続けてしまいます。
その結果として、コルムは左手の指を全て切断、家族同然の存在であったロバのジェニーはコルムの指を喉に詰まらせて死亡、復讐のためパードリックはコルムの家屋に火を放つ、という狂気に発展してしまうのです。
この一見すると意味がわからないパードリックとコルムの常軌を逸脱した喧嘩こそ、アイルランド内戦で起こっていることなのです。
ネタバレ④:精霊バンシーの化身であるミセス・マコーミック
本作のタイトルである『イニイェリン島の精霊』とは、”死を予言する精霊バンシー”のことです。
バンシーというのは、アイルランドやスコットランドに伝わる妖精であり、死を告げる不吉な存在でもあります。
そしてコルムが完成させた曲のタイトル名でもあります。
一見、あまり本作のストーリーとは関係ないように思える死を予言するイニシェリン島の精霊バンシーですが、本作には精霊バンシーの化身とも思える人物が登場しています。
それが、”不思議な雰囲気を出している老女ミセス・マコーミック”です。
島の人々からは、「関わると面倒くさい老女」のような存在で描かれているミセス・マコーミックですが、「人が2人死ぬ」という予言をしておりました。
またパードリックの妹シボーンや隣人のドミニクから、「彼女は死神だ」とも言われております。
このことからも、ミセス・マコーミックが精霊バンシーの化身であることが推測出来ます。
ちなみにミセス・マコーミックが予言した「人が2人死ぬ」ですが、実際には1人しか死んでおりません。
その人物こそがドミニクですね。
ドミニクは湖のほとりで足を滑らし、溺死をしてしまいました。
このとき、冒頭でドミニクが持っていたカギ付き棒をミセス・マコーミックが持っていたのが何とも意味深でしたね。
そして本来は死ぬ運命でありながらも、死を乗り越えた人物がコルムです。
コルムは、パードリックが放った炎で死ぬはずでしたが、炎が拡がる前に家を脱出して助かっています。
つまり、”イニシェリン島の精霊バンシーの予言は外れた”ということを表しています。
コルムが助かった理由は、色々と考えられますが”愛犬がいたから”という理由が最も大きいと考えられます。
きっとコルムが1人ぼっちだったら、きっと炎に包まれて、精霊の予言どおりに死んでいたはずです。
対してドミニクには、愛する家族はおらず(父親はいるが暴力的)、パードリックの妹シボーンにもフラれてしまいました。
そして唯一信じていたパードリックが「コルムの音楽仲間に嘘をついて島から追い出した」という言葉を聞いて失望し、本当の意味で孤独になってしまったんですね。
だからこそ精霊バンシーの死の予言に対抗することが出来なかったということです。
ネタバレ⑤:「あいこ」が意味するもの
本作のラストシーンで、コルムがパードリックに対し「これであいこだよな?」と言いますが、パードリックは「あいこではない」、「どちらかが死ぬまで終わりはない」と言い放ちます。
このシーンこそ、アイルランド内戦そのものを表しているように感じました。
というのも、”どちらかが手を引いて「あいこ」にしない限り、争いは永遠に続く”んですよね。
パードリックとコルムの喧嘩、そしてアイルランド内戦もきっかけは些細なことだったはずです。
しかし双方が「あいこ」にすることなく、次々と憎しみをぶつけてしまったため、思いもよらぬ悲劇を生み出してしまいました。
本作の場合、パードリックとコルムのどちらか一方が途中で「あいこ」にしていれば、悲劇を防ぐことが出来たんですよね。
しかしお互いのプライドや思想が邪魔をしてしまい、どうしても「あいこ」にすることが出来なかったのです。
この辺りに人間の抱える闇やジレンマが凝縮されていると感じました。
ネタバレ⑥:ラストシーンで砲撃音が聞こえなかったわけ
ラストシーンでアイルランド本島から砲撃音が聞こえなくなりました。
その理由は、”1923年5月にアイルランド内戦が終結したから”です。
パードリックスとコルムの喧嘩は、1923年4月1日から始まりました。
つまり2人の喧嘩は、1ヶ月もの間行われていたことになります。
そして2人の喧嘩とアイルランド内戦には、共通点があります。
共通点とは、”内戦に終わりはない”ということです。
実際にアイルランド内戦も1923年5月に終結しましたが、今でもアイルランドの政治に影響を与え続けています。
そしてパードリックスとコルムの喧嘩も「あいこ」にしない限り、終わることはないのです。
内戦と喧嘩というスケール規模の違いはありますが、人間の本質を知れるシーンですね。
映画『イニシェリン島の精霊』の感想
圧倒的な人間模様を描いた『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督の作品ということもあり、とても重厚で見所がある映画でした。
昨日まで仲が良かったパードリックとコルムの2人が、突然仲違いしてしまい、狂気の沙汰に走っていく様子はとても見応えがありましたね。
しかし「2人が喧嘩する理由」、「イニシェリン島の精霊バンシーの正体」などが説明されることなく、観客の考えに委ねられるシーンが多かったため、好みはわかれるかもしれませんね。
そしてアイルランド内戦が時代背景となっていることで、作品自体がとても深みがある内容に仕上がっています。
マーティン・マクドナー監督は、舞台設定を1923年のアイルランド内戦時にした目的について、「2人の男の分断も、内戦の両軍の分断にも寓話的な側面がある。2人の小さな戦争を描きつつ、同時に海の向こうで大きな戦争をやっているという錯乱状態的な感覚も描きたかった」とインタビューで語っています。
もしアイルランド内戦が時代背景となっていなかったら、単なる男2人の痴話喧嘩みたいな内容になっていたと思うので、このあたりの設定は流石マーティン・マクドナー監督といったところですね。
登場人物もそれぞれ特徴があり、とても良い味を出していました。
特に変わり者の隣人であるドミニクは、かなり存在感を発揮していましたね。
ドミニクは、パードリックのもう1つの姿だと考えています。
もしパードリックが妹シボーンもおらず、親友コルムもいなかったらドミニクのような孤独な人間になっていたんだと思います。
そしてパードリックも精霊バンシーの死の予言に対抗出来ず、死んでいた可能性すらあるのです。
そして本作中で唯一希望の道を歩み出したのが、パードリックの妹であるシボーンですね。
シボーンは、アイルランド本当で仕事を見つけ、退屈なイニシェリン島ではなく、希望と自由に溢れた人生を選択しました。
結果的にアイルランド内戦は終結したので、シボーンの選択は正しかったのだと思います。
兄であるパードリックがシボーンの後を追って、アイルランド本島に行くことはないかと思いますので、勇気ある決断を行ったシボーンは本当に素晴らしいですね。
この他にも精霊バンシーの化身であるミセス・マコーミック、ドミニクの父親でクズ警察官のピーダーなど魅力的なキャラクターが登場します。
それぞれの人物が何を考えて行動していたのか・・・そんなことを考えながら本作を観るとより楽しめそうですね。
まとめ
とても見応えのあるヒューマンドラマ映画です。
少し内容が難しいですが、時代背景にアイルランド内戦があるということを理解しておくと、内容が理解しやすいかと思います。
些細な出来事がきっかけで仲違いしてしまった男2人が辿る狂気の運命をお楽しみください。
またマーティン・マクドナー監督の『スリー・ビルボード』も最高傑作ですので、まだご覧になっていない人は、この機会にご覧になることを強くオススメします。
\31日間無料でお試し/
31日以内の解約なら無料♪
映画チケットが最大900円に!

最後まで読んでくれてありがとうございました。