こんにちは、ニャンコです。
このブログは映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のこんな疑問に答えていきます。
・見所ポイント
・ネタバレ一覧
・感想と考察
①芸術学部映画学科卒(卒論学年2位)
②映画歴20年以上
③累計2,000本以上観賞している変態
④実はホラー映画苦手(特に和風ホラー、リングとか無理!)
⑤Twitterで毎日おすすめ映画ツイート
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の見所を、映画好きの変態猫であるニャンコがネタバレありで感想と考察を書いています。
まさか、ラストがあんな展開になるなんて・・・
きっとブログを読み終わったとき、もっと映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』が好きになると思いますよ♪
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のあらすじ
ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。
実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。
明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。
・復讐映画の新境地
・復讐方法が想像していたのと異なる
・加害者と定義とは?
・ラストは観客も背筋が凍る
Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作です。
監督のエメラルド・フェネルは、本作が長編映画デビュー作ということですが、デビュー作ということを感じさせないほど素晴らしい映画に仕上がっています。
キャシーの復讐劇、人間模様、観客へのメッセージなど、どれもが痛烈であり新鮮です。
何と言っても、2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞していますからね。
また主人公のキャシーを「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが演じており、「スキャンダル」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」や「スーサイド・スクワッド」でも知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めていることでも話題になりました。
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【ネタバレあり】映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』のネタバレ一覧
ネタバレ①:タイトルの意味
タイトルである「プロミシング・ヤング・ウーマン」は、直訳すると”前途有望な若い女性”という意味です。
ちなみに由来は、法律用語である「プロミシング・ヤング・マン」=”前途有望な若者(男性)」からきています。
アメリカでは男性に有利な判決が多く出ることから、そのような男尊女卑な社会に皮肉を意味も含め、あえて「プロミシング・ヤング・ウーマン」というタイトルにしているようです。
本作でも前途有望な女性であり医学生でもあったニーナ、そして主人公であるキャシーの将来が身勝手なアルという男子学生のせいで途絶えてしまいました。
本来は守るべき存在である被害者を守ることなく、前途有望な若者(男性)だということで加害者を守ってしまっているアメリカ社会。
このようなアメリカ社会をぶっ壊すためにキャシーは男性たち、そして加害者たちに復讐する、というのが本作の主なストーリーです。
ネタバレ②:キャシーの目的
本作で壮絶な復讐者として強烈なインパクトを与えてくれるキャシーですが、その目的は何なのでしょうか?
キャシーの目的は、”親友であるニーナを死に追い詰めた加害者たちへの復讐”、です。
この加害者の概念が本作は非常に現実味溢れる描写で描かれています。
というのも直接手を下した者以外に傍観者としてただ見ていただけの者も加害者に当てはまる、ということなんです。
キャシーの親友であるニーナは、学生時代に学友であるアルという男子学生から性的暴力を受け、そのショックから大学を中退し最後は命を絶ってしまいます。
良くある復讐映画だと、この直接手を下したアルに対して壮絶な復讐を行う、という流れになりますが本作は違います。
実はニーナがアルから性的暴力を受けている際、周囲には撮影している人物、助けずに傍観している人物がおりました。
また事件後にニーナが助けを求めても、助けに応じない人物、裁判で助けてくれない人物がおりました。
つまりこのように直接手を下してはいないが、他人事として傍観者としてあり続けた人物にもキャシーは復讐を行う、というのが本作最大の魅力であるということです。
そんなキャシーは、夜になると露出の高い服装でバーへ向かい泥酔したフリをします。
その目的は、”身体目的で女をお持ち帰りする男共に正義の制裁を与えている”、です。
というのも、キャシーは暴力的な復讐をしていないんですよね。
冒頭シーンで部屋に連れ込んだ男に暴力的な制裁を与え、服に血がついたかと思いきやホットドッグのケチャップでしたからね。
出典:IMDb
キャシーの復讐のやり方は暴力ではなく、”加害者本人もしくは家族にニーナと同じ体験をさせる”、という間接的な復讐方法です。
しかしこのような間接的な復讐を行うためには、綿密な準備や人手が必要不可欠です。
そのためキャシーは、人手となる人材を調達するために男共をひっかけていたのだと思います。
男共の弱みを握ってしまえば、キャシーの下僕としてこき使えますからね。
実際にマディソンへの復讐を行う際、冒頭の男性が登場していたので間違いないかと思われます。
このように着実に人手を増やし、虎視淡々と加害者たちに復讐を果たすキャシーは間違いなく有能な人物です。
本来であれば、このような才能や努力は社会にとって正しい方向に活かされるべきなのですが、キャシーは加害者たちの手によって前途ある将来を奪われています。
今更失った前途ある将来を取り戻すことは出来ない、しかしニーナや自分の犠牲の上で成功している加害者たちを決して許すことは出来ない、そんなキャシーの強い想いがスクリーン上からも伝わってきます。
ネタバレ③:マディソンの罪
出典:IMDb
本作でキャシーが復讐を果たす相手は5人います。
その1人が大学の同級生であるマディソンです。
マディソンは昔から派手な遊びが大好きであり、アルの悪事も知った上でニーナを笑い者にしていました。
そして助けを求めてきたニーナに応えることなく、むしろ突き放してしまったのです。
同じ女性であり同級生であったマディソンに突き放されてしまったことは、ニーナにとって相当のショックだったと思われます。
マディソンはニーナに対し、直接何かしらの手を下したわけではありません。
しかし助けを求めたニーナに手を差し伸べなかった、ニーナを笑い者にした、絶望の淵にいるニーナの気持ちを考えることが出来なかった、このように直接的な加害者ではなくともニーナを追い詰めた傍観者でいたわけです。
そのためキャシーはマディソンに対し、ニーナと同じ気持ちを味合わせるために復讐を果たします。
マディソンの酒に薬を混ぜて泥酔させホテルの一室に運び、その現場に見知らぬ男性を同席させたのです。
出典:IMDb
目覚めたらホテルの同室に見知らぬ男性がいる・・・普通であれば「何かされた!」と思ってしまっても無理はないですよね?
マディソンも疑心暗鬼になり、キャシーに何度も連絡を行いますが一向に繋がりません。
しかし実際には見知らぬ男性はマディソンに何もしておりませんでした。
キャシーはただ単にマディソンに対して、「助けを求めても誰も応じてくれない絶望と恐怖」を味合わせたかっただけなのです。
これはかつてニーナがマディソンに対して感じた絶望と恐怖でもあります。
このようにしてキャシーはかつての加害者たちにニーナが感じた絶望や恐怖を追体験させているわけです。
ネタバレ④:ウォーカー学部長の罪
キャシーの復讐相手の2人目がウォーカー学部長です。
ウォーカー学部長はかつてニーナとキャシーが通った医大の学部長です。
ニーナがアルから性的暴力を受けた際、ウォーカー学部長に助けを求めて訴えました。
しかしウォーカー学部長は、「前途有望な若者であるアルの将来を潰すわけにはいかない」、「ニーナも泥酔していたので性的暴力を受けたという証拠がない」、という理由からニーナの訴えをしっかりと聞かず、訴えを退けてしまいます。
そのためニーナは絶望し、医大を中退、そして自殺を図ってしまったのです。
ウォーカー学部長もニーナに対して、何か直接手を下したわけではありません。
しかし直接的な加害者ではないにしろ、ニーナを助けなかった傍観者であることには変わりありません。
そのためキャシーは、ウォーカー学部長にニーナと同じ気持ちを味合わせるために復讐を果たします。
ウォーカー学部長の一人娘を誘拐し、若い女性に飢えた男性がいる部屋に送り込んだのです。
もちろんそんな男性の部屋に若い女性が送り込まれたら、性的暴力をふるわれるのは簡単に想像が出来ます。
「被害にあったのが大切な人、家族だったらどうするのか?」とキャシーに問われたウォーカー学部長は、かつてニーナに対して行った振る舞いを反省し、キャシーに謝罪するのです。
しかし実際はウォーカー学部長の一人娘は誘拐などされておらず、ただ単にカフェで好きなバンドの待ちぼうけをしているだけでした。
このようにキャシーはウォーカー学部長に対しても、かつてニーナが感じた絶望や恐怖を追体験させているわけです。
ネタバレ⑤:グリーン弁護士の罪
出典:IMDb
キャシーの復讐相手の3人目がグリーン弁護士です。
グリーン弁護士は被害者であるニーナではなく、加害者であるアルに有利な弁護を行いました。
本来であれば、被害者を守るべき立場である弁護士が金に目が眩み加害者を助けてしまった、その結果としてニーナは絶望し自殺を図ってしまったわけです。
グリーン弁護士もニーナに対して、何か直接手を下したわけではありません。
しかし直接的な加害者ではないにしろ、ニーナを助けなかった傍観者であることには変わりありません。
しかしグリーン弁護士だけは、他の復讐相手とは異なり自らの行為を深く反省していました。
キャシーはグリーン弁護士に対しても他の復讐相手同様に復讐を果たそうと考えておりましたが、深く反省し許しを乞うグリーン弁護士の姿に動揺してしまいます。
そしてキャシーも初めて加害者に対し、許しを与えます。
グリーン弁護士の姿を見て復讐の虚しさを感じたキャシーは、「今ある幸せを大切にし、ニーナの分まで生きていこう」と前向きな姿勢になります。
しかしマディソンがニーナが性的暴行を受けている動画を持ってきたことにより事態は急変。
なんとキャシーの同級生であり現恋人であるライアンがニーナの性的暴行現場に居合わせたことが判明するのです。
キャシーにとっては直接手を下した加害者だけではなく、見ているだけでニーナを助けなかった傍観者も加害者であり復讐の対象です。
ネタバレ⑥:アルの罪
出典:IMDb
キャシーの復讐相手の4人目がアルです。
アルはニーナに性的暴力を働いた実行犯でもあります。
つまりニーナに対して直接手を下した一番罪が重い男です。
キャシーはアルの独身最後のパーティーにストリッパーとして忍び込み、アルをベッドに縛り付けることに成功、そしてアルの身体にニーナの名前を刺青として刻み込もうとします。
それは、”アルの人生に常にニーナの名前を付きまとわさせるため”、です。
ニーナはアルから性的暴力を受けた後、どこに行っても「アルに性的暴力を受けた女性」として常にアルの名前が付いてまわりました。
ニーナ自身を辱め、そして人間としての尊厳を奪った男の名前が常に付きまとう、これは計り知れない苦痛であり絶望です。
周囲の誰も傍観者として助けてくれず、人生に絶望してしまったニーナは自殺をしてしまった・・・だからこそキャシーはアルに対し、ニーナと同じ苦痛と絶望を味合わせようとニーナの名前を刺青として身体に刻み込もうとしたのです。
しかしここで問題が発生します。
アルをベッドに縛り付けていた手錠が外れ、反対にキャシーがアルに殺されてしまうのです。
普通の復讐映画だったら、復讐者が殺されるなんてあまりない展開ですからね。
警察にバレることを恐れ、アルは悪友ジョーと一緒にキャシーの死体を燃やし隠蔽してしまいます。
しかしキャシーは自らが殺されることすら予想しており、自らの遺書やニーナが性的暴行を受けている動画をグリーン弁護士に予め郵送していました。
グリーン弁護士はかつての罪悪感に押し潰されておりましたので、「今回こそは正しい選択、判断をする!」という使命に駆られています。
そのためグリーン弁護士が通報した警察がアルの結婚式に現れ、アルは花嫁や家族の目の前で殺人犯として逮捕されてしまうのです。
キャシーが直接手を下したわけではありませんが、アルは殺人犯として警察に逮捕されましたので社会的に抹殺されたということになります。
ネタバレ⑦:ライアンの罪
キャシーの復讐相手の5人目がライアンです。
ライアンはキャシーに想いを寄せる小児科医であり、かつての同級生でもあります。
キャシーとライアンは仲睦まじい恋人でしたが、ニーナが性的暴力を受けている動画にライアンが映り込んでいたことから、ニーナを助けなかった傍観者としてキャシーの復讐相手にノミネートされてしまいます。
そんなライアンへの復讐方法は本作屈指であり、私たち観客側も肝を冷やす内容に仕上がっています。
ライアンはキャシーに「復讐に協力しないなら、動画の内容を職場や家族、世間にばら撒く」と脅されていました。
しかしキャシーはアルに殺され行方不明になってしまいます。
ライアンは内心安堵していたのでしょう。
しかし行方不明となっていたキャシーからライアンの携帯に予約されていたメッセージが届きます。
そのメッセージというのが”これで終わりだと思った?”・・・怖すぎる!!
きっとライアンは、いつか動画が世間に公開され自分の悪事が知られてしまう、という恐怖を抱えながら一生を生きていかなければならないとのだと思います。
ライアン自体は加害者ではなくたまたま現場に居合わせた傍観者なので少し可哀想な気もしますが、これには観客側が「だって傍観者になるしかないじゃん?」という言い訳が入っているようにも思います。
つまり誰もがライアンになる可能性があるということなんですよね。
だからこそ安全地帯から本作を楽しんでいた観客からすると、最後のキャシーのメッセージに肝が冷えるというわけなんです。
ネタバレ⑧:キャシーの罪
キャシーの復讐相手は5人ですが、実は6人目の復讐相手がいます。
それはキャシー本人です。
キャシーの復讐相手、いわゆるニーナへの加害者というのは直接手を下さなかった傍観者も含まれます。
もちろんキャシーはニーナの親友ですし、ニーナに対して直接手を下しておりません。
しかしキャシーには、”ニーナが性的暴力を受けているとき、側にいて守ってあげることが出来なかった”という罪があります。
そうなんです!
客観的に見るとキャシーは何も悪くないんです!
しかしキャシー本人はそう考えておらず、「自分もニーナを助けることが出来なかった傍観者」として考えているのだと思います。
だからこそ最後は自分自身の死を持って、アルに社会的制裁を加え、ニーナの無念を晴らしたのだと思われます。
映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』の感想
前途有望な女性であったニーナとキャシーが、同じく前途有望な男性によって未来を奪われてしまう。
本来であれば加害者である男性が裁かれるべきなのに、「前途有望だから・・・」という理由で男性を優遇してしまうアメリカ社会にメスを入れた映画です。
加害者と被害者の間に、「男性だから、女性だから」という概念は当てはまらないと思うんですよね。
あるのは、「罪を犯したかどうか」、ただそれだけだと思います。
しかし社会はそんなに単純ではありません。
それは私たち観客側にも言えることだと思います。
そんな狂った社会をぶっ壊すのが本作の主人公であるキャシーです。
直接的な暴力は振るわないにしても、「加害者に被害者の気持ちを追体験させる」、という復讐方法には背筋が凍るものがあります。
加害者=傍観者、というのもポイントですよね。
皆さんも経験ありませんか?
困っている人がいるのに、「私には関係ない、別の誰かが助けてくれる」と見て見ぬフリをしてしまうことって日常で結構あると思うんです。
これってキャシーからすると、私たち観客も傍観者=加害者になるんですよね。
だからこそキャシーがライアンに対して行った復讐方法はエゲツないですし、観客も背筋が凍ることになるのです。
よくある復讐映画とはテイストが異なりますが、本作は間違いなく私たちの心にトラウマを押し付ける名作だと思います。
まとめ
傍観者を含めた加害者たちに「被害者の気持ちを追体験させる」という復讐方法を行った本作。
爽快な気分になりたい人にはオススメ出来ませんが、復讐映画の新境地を描いた名作です。
ラストシーンは、必ずや肝が冷えることでしょう。
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最後まで読んでくれてありがとうございました。